春のパシフィックGPから半年がたち、日本に再びF1が帰ってきた。しかし、そこにアイルトン・セナの姿はなかった。スタート前に、セナの代名詞でもあったポールポジションの位置にセナの姉ビビアーニさんが下り立ち、追悼セレモニーが開催され、レースはスタートした。
セナがいない事実に鈴鹿の女神も涙雨を流し、この雨がレースに緊迫感を盛り上げることになる。
スタート後の雨は激しさをまし、井上隆智穂、片山右京らがメインストレートでスピン。14周目には、デグナーで止まったモルビデリのフットワークをを除去する作業中、マクラーレンのブランドルがスピンしながら突っ込むという事故が発生。オフィシャルの一人がこの事故に巻きこまれて、レースは赤旗中断となる。
レースは2ヒート制として再開された。
中断前のトップはミハエル・シューマッハだったが、再開されたレースでは1ストップ作戦をとったウイリアムズのD.ヒルが残り10周の時点でミハエルの前に出ることに成功、リードを築く。その差は14秒あまり。しかし、シューマッハは驚異的なスピードで追い上げをはかる・。その差はみるみる縮まるものの、ヒルも全力で逃げる。
中断前のヒルとシューマッハのタイム差は約2秒。2秒以内にミハエルが追い上げることができれば、ミハエルの優勝となる。残り5周で、その差8秒3……残り2周で、4秒2。緊迫したタイム合戦が続く。
逃げるヒル、追うシューマッハ。しかし、ヒルは3秒36差で逃げ切りに成功。まるで天国のセナが見守ってるかのように、ヒルは力を出し切った。
期待の日本勢は序盤に全滅してしまったが、終盤のヒルVSシューマッハと並んでレースを盛り上げたのは、アメリカ帰りでウイリアムズに乗るマンセルと、フェラーリのアレジ。濡れた路面にもかかわらず130Rでもハイスピードバトルを繰り広げた。アレジを追いかけ回し攻め込もうとするマンセルは、さすがに92年のチャンピオン。激しい走りは健在で、セナのいない寂しさを埋め合わせてくれた。
「この優勝をセナの家族にささげたい。僕たちは、いつもセナのことを思っている」(D.ヒル)
ヒルの優勝で、シリーズチャンピオンの決着はつかず、最終戦オーストラリアに持ち越されることとなる。
(観衆15万1000人)
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